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研究案内

呼吸器感染症

1.インフルエンザウイルス感染症における活性イオウ種の役割の解明 (図1)

インフルエンザウイルスは肺炎を発症すると重篤化し、ARDSなど致死的な病態を誘導しますが、現在有効な治療法は確立されておらずその病態も完全には明らかになっておりません。当科では、以前より内因性の新規抗酸化因子である活性硫黄種(RSS)のCOPD病態における役割を報告しておりますが、インフルエンザウイルス感染動物モデルを用いてインフルエンザウイルス肺障害におけるRSSの役割を検討しました。最近、主にミトコンドリアに存在するシステインtRNA合成酵素(CARS)2が主要なRSS産生酵素であることが本学の共同研究者の赤池教授らにより同定されております。このCars2ヘテロノックアウト (Cars2 KO)マウスにインフルエンザウイルスを投与しますと、野生型マウスと比較し、肺障害が強く誘導され、炎症細胞数やIL-6などの炎症性メディエーターの産生も増加しました。RSSの外因性供与体であるグルタチオントリスルフィド(GSSSG)を投与しておきますと、インフルエンザウイルスによる肺障害や炎症が抑制されました。気道上皮細胞における検討ではインフルエンザウイルス感染やその受容体であるtoll様受容体3 (TLR3)の活性化を介して活性酸素種(ROS)の産生増加とCARS2の発現低下をもたらし、その結果強力な酸化ストレスが生じること、さらにGSSSGはインフルエンザウイルスによるROS産生を抑制することが明らかになりました。以上の結果からCARS2-RSSの経路がインフルエンザウイルス感染時に酸化ストレスを調整することでその病態に関与する可能性が示唆されました。この経路を標的とした治療戦略がインフルエンザウイルス肺炎やCOVID-19など様々なウイルス感染症への応用も期待されます。

図1: インフルエンザウイルス感染症における活性イオウ分子種の役割の解明

 

 

2.抗ウイルス免疫能測定技術の開発によるCOVID-19重症化リスク予測法の確立 (図2)

過去の類似コロナウイルスに対する細胞性免疫記憶による交差反応性がCOVID-19病態に保護的に作用し重症化リスクを予測できるとの仮説のもとに、複数の研究資金(東北大学COVID-19対応出資事業(BIPフェーズ1育成)、JST A-STEP令和2年度追加公募 (トライアウトタイプ: with/postコロナにおける社会変革への寄与が期待される研究開発課題への支援)を獲得し、新型コロナ既感染回復者および非感染者の血液から重症化抑制に寄与する交差反応性を有するヒト風邪コロナウイルス反応性T細胞を同定する新技術の開発に向けた探索研究を行っております。現時点でCOVID-19患者の重症度と正や負の相関を示すウイルス抗原の存在が明らかとなり、得られたデータからCOVID-19重症化リスク予測式を導き出すことで有望な結果を得ています(国内・国際特許申請済み)。この技術を発展させて社会実装を行うことで、効率的かつ適切な感染対策と社会経済活動維持の両立を可能としたいと考え、研究を進めています。

図2: COVID-19重症化リスク予測を目指した抗ウイルス免疫能測定技術の開発

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