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診療案内

サルコイドーシス

サルコイドーシスとは?

サルコイドーシスの肉芽腫とは?

肉芽腫はどこにできやすいですか?

サルコイドーシスの診断はどうしますか?

サルコイドーシスの予後・治療法は?

東北大学病院のサルコイドーシスの診療実績は?

サルコイドーシスの多彩な病変(自験例)

 

 

サルコイドーシスとは?

  • 不明の理由で、生体に有意義ではない肉芽腫(下の図)が体中のいくつかの臓器にできてくる病気です。
  • 頻度は人口10万人に対して10〜20人程度と比較的稀です。
  • 東北大学病院には現在250人程度通院しています。
  • 20歳代の男女と40歳以上の女性に発症することが多いです。
  • 両側肺門リンパ節、肺、眼、皮膚に病変をきたすことが多いですが、肝臓、脾臓、耳下腺、心臓、脳神経系、筋肉、骨などいくつかのいろんな臓器に病変を作ることもあります。
  • 遺伝や感染するような疾患とは考えられていません。

 

 

 

サルコイドーシスの肉芽腫とは?

  • 肺サルコイドーシスの肺組織像リンパ球やマクロファージ(貪食細胞)が生体に有害な炎症を起こす菌や物質を封じ込める以外の不明な理由によって、血管の外に集まってできた塊をいいます。時間が経過するとマクロファージが変化した細胞(類上皮細胞、多核巨細胞)などもこの肉芽腫に出現してきます。この塊によって正常な機能が障害されるため症状が出ます。
  • 時間が経っても癌にはなるとは考えられておりません。
  • サルコイドーシスの肉芽腫は、近年では健常人でも持っているニキビの原因となるアクネ菌に対する過剰な免疫反応が関与しているという説が有力とされています。

 

 

 

 

肉芽腫はどこにできやすいですか?

臓器 肉芽腫の存在 存在した時に症状を出す頻度
ほぼ100% 進行例で高い
縦隔肺門リンパ節 およそ90% まれ
およそ60%

ほぼ必発

皮膚 およそ35% ほぼ必発
心臓 生存例10%以下
(死亡例ではおよそ70%)
ほぼ必発
肝臓 およそ80% まれ
脾臓 およそ40% まれ
腎臓 およそ15% まれ
表在リンパ節 およそ15% ほぼ必発
筋肉 およそ15% およそ1割
神経 およそ10% ほぼ必発
およそ2% ほぼ必発
関節 およそ1% ほぼ必発

 

 

 

サルコイドーシスの診断はどうしますか?

  • サルコイド―シスの診断基準と重症度分類 日サ会誌2015に準じて下記のように検査をしています。
  • 画像検査(検診など)や臨床症状からサルコイドーシスが疑われて、最終的には体のどこかから肉芽腫を見つけることで診断を確定します。しかし、体調が良くない場合や生検が危険な場合、あるいはなかなか肉芽腫が見つからない場合などには、いくつかの状況証拠から臨床診断することもあります。
  • 右の図にあるようにいくつかの検査が必要で、さらに他の疾患ではないと考えられたときに診断が可能になります。組織検査は多くは肺から行いますが、皮膚症状のある方や表在リンパ節が腫れている方はそこから生検することも可能です。

 

 

 

 

サルコイドーシスの予後・治療法は?

  • サルコイドーシスは自然に治る症例から必死な治療にも関わらず悪化する症例まで、経過の幅がとても広いことが知られています。つまり、患者さん個々で症状や経過が異なりますので、詳細は主治医に聞いてください。他人の経過が自分に当てはまることは稀ですので注意してください。
  • 若い症例でBHLだけの場合は自然に治ることが多く、中高年発症でBHL以外に症状がある場合は治療が必要ないですが慢性化してしまうことが多い印象があります。
  • 心臓病変、脳神経病変、重症な眼病変などの場合には診断後すぐに治療を要します。
  • 治療は、ステロイド全身投与を長期間行うのが一般的です。
  • ステロイド治療によって改善した症例は無治療で改善した症例よりも、改善の程度が良くなく再発率も高くなる可能性があるとの報告もあり、必ずしも早期治療が良いとも限りません。治療のタイミングは主治医とよく相談して決めていくことをお勧めします。

 

 

 

東北大学病院のサルコイドーシスの診療実績は?

(村上康司、玉田 勉、奈良正之ほか 日サ会誌 33, (1), 83-89, 2013より引用)

過去12年間に当科で新規診断され、診断時にステロイドで未治療のサルコイドーシス症例162例を対象とした調査結果をご紹介します。診断基準変更前の2000–2005年診断例を前期群(全78例、男性32例/女性46例、平均41.3±1.9歳)、変更後の2006–2011年診断例を後期群(全84例、男性29例/女性55例、平均44.8±1.6歳)と定義し、この2群間での診断時の臨床的特徴を比較・検討しました.各検査のカットオフ値はACE≧25 IU/L、sIL-2R≧520 U/mL、血清Ca≧10.5mg/dL、BALF中CD4/8比≧3.5を所見ありと定義しました。

予後予測因子の解析では,上記162例の中から診断後にステロイドを投与された症例および経過観察期間が1年未満の症例を除く全115例(男性41例/女性74例、平均43.1±1.5歳)を対象としました。疾患の予後としては病変の広がりおよび程度を画像所見を中心として①肺野病変、②BHL(bilateral hilar lymphadenopathy)、 ③胸郭外病変の優先順位で評価しました。第一に①で評価し増悪群/改善群を判定し、不変であれば②で増悪群/改善群を判定、さらに不変であれば③で最終的な予後の判定を決めました。なお、点眼等の局所治療薬で改善した胸郭外病変は評価対象外としました。予後の評価は“経過観察時の採血施行後3–6ヵ月の時点”で行いました。評価項目は血清ACE値および血清sIL-2R値の“診断時の値”および“診断時と経過観察時の値の変化率”と予後との関係を検討した(2地点間の平均観察期間:21.9 ヵ月±1.1 ヵ月)。検査値の変化率はΔACE(またはΔsIL-2R)=[{経過観察時のACE(またはsIL-2R)値−診断時のACE(またはsIL-2R)値}/診断時のACE(またはsIL-2R)値]×100(%)を用いて求めました。

統計解析では2群間比較はStudent t-test,Paired t-testを用い、3群以上の比較はANOVAを用い,p値<0.05を有意差ありとしました。

 

 

図1 診断時における性・年齢別分布では前期群で男性が20代に一峰性のピークを、女性が20代と50代に二峰性のピークを示していました。それに対し、後期群では男性の分布が30代で増加し、女性では50代にピークを示す一方で、他の年齢層はほぼ一様でした。

 

 

図2 臨床診断に関連する検査の有所見率は血清sIL-2R値、胸部単純X線でのBHLおよびGaシンチグラフィーの各項目で70%以上が陽性になったのに対し、血清ACE値および血清Ca値は陽性率が40%を下回っていました。また、ツベルクリン反応は後期群で有意に陰性例(所見あり)が多く、血清Ca値は前期群で有意に陽性例が多かったです。

 

 

図3 胸郭外罹患臓器の割合では心臓および神経病変の罹患率が後期群で高く(心臓:前期5%,後期13%,神経:前期0%,後期8%)、皮膚病変が後期群で低い傾向でした(前期25%,後期11%)。 診断契機は従来の検診および他疾患経過観察中のCT(computed tomography)/ PET(positron emission tomography)等の検査異常で偶然発見される例が前期群30%、後期群39%と後期群で高い傾向にあり、眼症状で発症した割合は前期群49%、後期群29%と後期群で低い傾向がありました。

 

 

 

表2 予後解析対象となった115例の患者背景をまとめました。自然経過での増悪群,不変群,改善群はそれぞれ15%,23%,62%でした。

 

 

 

図4 診断時の血清ACE値および血清sIL-2R値と自然予後とは各群間で有意な差は認められず、それぞれのマーカーの一定期間の変化率でみると、ΔACEは増悪群と不変群の間では有意差を認めませんでしたが、改善群と不変群では有意差を認めたのに対して、ΔsIL-2Rは不変群に対して増悪群で有意に高値、改善群で有意に低値となりました。

 

以上まとめると、新診断基準に改訂後、30代男性の脳神経病変を有する症例の診断および40代以降の女性の心臓病変を有する症例の診断が増加している傾向がありました。この理由としては、新診断基準により複数科の連携が進むことなどによる罹患臓器の検索/診断精度の向上および近年の画像検査技術の進歩などにより旧診断基準では診断がつかなかった症例が新診断基準以降の診断症例に含まれているためと推察されました。また、ΔsIL-2Rは今後の疾患活動性を反映していると考えられ、容易に繰り返し検査ができることからも、自然予後の予測が困難な本症における重要な予後予測マーカーになると考えられました。

 

 

 

サルコイドーシスの多彩な病変(自験例)

 

 

 

 

 

 

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